研究・活動Research
「名古屋大学モンゴル国立教育大学子ども発達共同支援センター」の開所
2017-03-01
2016年9月、モンゴル国における子どもの発達に関する相談と研究および支援人材の育成を行うセンターが、モンゴル国立教育大学に開設されました。このセンターは、名古屋大学とモンゴル国立教育大学が2013年より行っている「モンゴル国における発達障害児支援研究」の一環として開設されたものです。
2016年9月29日に、開設式が行われ、両大学関係者、モンゴルの教育、行政、発達支援関係者など約50名の参加がありました。式典では、タミルモンゴル国立教育大学副学長、金井篤子本学心の発達支援研究実践センターなどの挨拶の後、モンゴル教育大学学生による馬頭琴の演奏が行われました。当日の様子は現地マスコミに加えてNHK でも報道されました。
センターの運営は、モンゴル国立教育大学教員養成学部の教員を中心としたモンゴル側スタッフと、名古屋大学心の発達支援研究実践センターの教員(臨床心理士・児童精神科医師)が協力して行っています。
センターの活動内容は、大きく以下の4つに分けられます。
(1)モンゴル国の子どもの発達やこころの問題に関する相談活動
センターには、相談室およびプレイルームがあり、実際に発達やこころの問題に心配を持つ子どもとその家族への相談活動を行っています。相談活動は、名古屋大学スタッフがモンゴルを訪問して協働で実施しています。こうした相談活動を通じて、モンゴル国の子どもの発達やこころの問題を支援する専門家育成を行っています。
(2)モンゴル国における子どもの発達を評価するツールの開発
子どもの発達を支援するためには、発達状況を正確に知ることが必要ですが、同国には子どもの発達を評価するツールがありません。我々は、日本で広く利用されている田中ビネー知能検査Ⅴのモンゴル版開発を行っています。
2017年1月には、モンゴル教育大学の心理学や教育学を専門とする教員7名が訪日し、名古屋大学において、検査開発に関する集中ミーティングを行いました。
(3)モンゴル国における子どもの発達に関する共同研究の実施
モンゴル国における子どもの発達に関する問題を把握するために、調査研究を行っています。2015-16年に、モンゴル国の小・中学校教員を対象としたアンケート調査を行いました。その結果、モンゴル国においても、支援が必要と考えられる児童・生徒は数多く認められ、その中には、多動、集中力欠如、対人トラブルなどの発達障害特性と関連すると思われる問題が含まれていることがわかってきました。今後、支援が必要な児童・生徒がどのくらいいて、どういった支援が必要であるのかなどを調査することを検討しています。
(4) モンゴル国における発達障害や子どものこころの問題に関する専門家養成・啓発活動
2016年11月3-4日に、学校教員等を対象とした研修会を行いまいた。全国から約150名の参加があり、熱心に聴講して下さっている様子が印象的でした。
研修会に合わせて、子どもの発達支援者向けの専門書を発刊しました。これはモンゴル教育大学と名古屋大学のスタッフが協働で執筆したもので、発達に支援が必要な子どもに対する発見・支援に関する実践的な内容が書かれているものです。
今後の予定
2017年6月にセンター開設記念式典およびシンポジウムを開催します。その際には、モンゴル国の学校教員約150名を対象とした研修会を併せて開催する予定です。