アジアにおける発達障害児支援研究Research
アジアにおける発達障害児支援研究
本センターの発達障害児支援研究プロジェクトの一環として、アジアにおける発達障害児支援研究を行っています。
主としてモンゴル国、ベトナムで活動を行っています。
モンゴル国では、2013年からモンゴル国立教育大学と学術協定を結んで共同研究を行っていて、2016年に同大学内に開設した「名古屋大学モンゴル国立教育大学子ども発達共同支援センター」が活動拠点となっています。現在は、モンゴル医科大学も含めた三者協働で、知能検査モンゴル版の開発・普及、発達障害児の疫学調査や児童精神科医養成研修プロジェクトなどを行っています。
ベトナムでは、ハノイ教育大学、ハノイ医科大学などと交流を続けています。ハノイ教育大学とは2023年に学術協定を結び、発達検査のベトナム版開発などの共同研究を進めています。
活動報告
12月9日-21日 モンゴル児童精神科専門医 養成研修
2025-01-07
12月9日ー21日の日程で,児童精神科専門医養成研修のため,モンゴルより10名の精神科医が来日し,講義・症例検討および,愛知県内各地の専門機関の視察に訪れました。
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初日,金子センター長を囲んで
講義・症例検討にあたっては,本学医学部附属病院 親と子どもの診療科・加藤秀一先生,同精神科・竹田和弘先生,尾張福祉相談センター・吉川徹先生,本学医学部保健学科・佐野美沙子先生,国立精神・神経医療研究センター・高橋長秀先生,刈谷病院・石島洋輔先生,あいち小児保健医療総合センター・川村昌子先生,宮崎三希子先生,愛知県医療療育総合センター・井上絵梨先生,三河病院・鬼頭諒先生,本学アジアサテライトキャンパス学院・青木藍先生にご協力いただきました。
連日の講義,症例検討にもかかわらず,参加者の先生方は最後まで熱心に質疑や意見交換をされていました。
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講義の様子
また,本学医学部附属病院をはじめ,愛知県内の小学校(蟹江町立新蟹江小学校)や児童精神科に関わる医療機関(あいち小児保健医療総合センター,愛知県医療療育総合センター,刈谷病院)を視察しました。参加された先生の多くが日本に訪れること自体,初めてとのことで,日本の児童精神科医療だけでなく,日本とモンゴルのさまざまな文化の違いにも触れ,大変感銘を受けておられました。
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小学校では,給食や掃除も体験しました
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見学の様子
最終日には2週間の統括として,日本側のスタッフから参加者の先生方へ,児童精神科医として自分自身のこれまでの経験を踏まえた助言が送られ,参加者の先生方1人1人からも今後のキャリアへの抱負が語られました。
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修了証の授与
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修了式後,全員で記念撮影
今回参加された先生方の,モンゴルでの今後のご活躍と,モンゴルの児童精神科医療のさらなる発展を祈念するとともに, 我々も一層精進していきたいと思います。
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皆様,2週間お疲れ様でした!
10月21日 ギルバーグ教授との研究ミーティング
2024-10-23
10月21日に当センターの金子センター長・教授,野邑特任教授,横山特任助教,伊藤特任助教が,高知県療育福祉センター内,高知ギルバーグ発達神経精神医学センター(KGNC)を訪問し,来日中のギルバーグ教授とミーティングを行いました。
スウェーデン ヨーデボリ大学のクリストファー・ギルバーグ教授は,児童精神医学分野における世界的な権威であり,私たちが現在進めているモンゴルにおける発達障害の疫学調査研究(ギルバーグ研究)にも指導的立場としてご参加いただいています。
このたび,かねてよりギルバーグ教授の指導・協力関係にあるKGNCのご協力の下,5年ぶりに対面でのミーティングが実現しました。
私たちからはギルバーグ研究について,目下進行中の二次調査の状況をご報告,一次調査の研究成果の論文化についてご相談し,ギルバーグ教授から,今後の方向性について建設的かつ重要なご助言をいただくことができました。
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ミーティングは秋の風が心地よいテラスにて行われました
今後,いただいた助言を踏まえ,さらに研究を進めて参ります。
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ギルバーグ教授を囲んで
10月6日ー14日 モンゴル訪問
2024-10-16
10月6日ー14日の日程で当センターの野邑特任教授,横山特任助教,伊藤特任助教がモンゴル国を訪問しました。また今回,児童精神科専門医研修を実施するにあたり,医学部附属病院 親と子どもの心療科の加藤秀一先生,尾張福祉相談センターの吉川徹先生,医療法人成精会 刈谷病院の石島洋輔先生にもご同行いただきました。
2年目となる児童精神科専門医研修には,今年もモンゴル国内の精神科医10名が参加しました。連日,長時間の講義となりましたが,参加者の皆さんは最後まで集中力を切らすことなく熱心に参加されていました。参加者の先生方は,12月にも日本で2週間の研修を受講する予定となっています。
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研修受講者の精神科医の皆様と
また,首都ウランバートルから片道500km離れたスフバートル県バルーンウルト市を訪れ,地域の総合病院精神科を視察しました。広いこの地域全体の患者を数名の医師で対応したり,物理的な距離のために通院が難しい患者に入院治療を施したりといった,広大なモンゴル国ならではの地域医療の実情を理解する貴重な機会となりました。
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バルーンウルト市内の総合病院にて
また野邑特任教授,横山特任助教,伊藤特任助教の3人は,かねてより共同研究を行っているモンゴル国立教育大学にも訪問しました。教員養成学部の学部長・ビャンバツェレン先生に面談のお時間をいただき,ここまでの共同研究・実践の成果と,今後の展望についてお伝えすることができました。
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ビャンバツェレン教員養成学部長と
その後,モンゴル版田中ビネー開発プロジェクトのメンバーと,現在進行中のモンゴル国内における発達障害の疫学調査に関するミーティングを行い,今後の方向性を共有しました。
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ミーティングの様子
また,同大学の教育学部心理と方法論学科では精神療法に関する講義を行いました。講義には在学中の学部生や大学院生だけでなく,現在は臨床現場で実践を行っている卒業生の方も含め,平日の夕方にもかかわらず大勢の方にご参加いただきました。
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講義の様子/ガルサンジャムツ心理と方法論学科長と
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地平線を背に
8月29日ー9月6日 モンゴル訪問
2024-09-10
8月29日ー9月6日の日程で当センターの金子センター長・教授,野邑特任教授,横山特任助教,伊藤特任助教がモンゴルを訪問しました。
モンゴル国立教育大学にて,今回のモンゴル訪問の主な目的の1つである,モンゴル版田中ビネー知能検査 検査者養成者研修の修了者を対象とした応用研修を行いました。
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講義の様子
野邑特任教授から「発達に特別な支援の必要な子どもへのMTBの適用」と横山特任助教から「MTBの結果の理解とその解釈」をテーマに講義を行った後,検査者養成研修を修了した現地専門家から実際にモンゴル版田中ビネー知能検査を実施した事例の発表がありました。それぞれの発表者からは,実際に検査を使用した所感や実際的な質問が積極的に挙げられ,私たちメンバーにとってもモンゴル国内での田中ビネー知能検査の実情について理解する有意義な時間となりました。
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受講者の皆様と
また滞在期間中,ウランバートルから郊外のダルハン市へ移動し,モンゴル国内における児童精神科専門医研修を前年度に修了した精神科医を対象に,応用研修を実施しました。野邑特任教授より「初回問診」「家族への心理支援」,横山特任助教より「プレイセラピー」,伊藤特任助教より「思春期・青年期の精神療法」というテーマで講義が行われました。
その後,ダルハン市内の精神科病院を見学させていただきました。入院病棟内に治療を受ける子供のために母子で入院できる病室が設えられているなど,精神科医療におけるモンゴルと日本の異なる様相について知る貴重な機会となりました。
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親子で入院できる病室
また今回の滞在では,モンゴル国の教育総局を訪問し,ニャム・オチール局長,さらに偶然総局を訪れていたナランバヤル教育大臣に面会することもできました。金子教授,野邑特任教授より,当センターのこれまでのモンゴル国での活動についてご説明しました。大臣や局長は,かねてより私たちの活動について知っていてくださったそうで,今後も必要に応じて協力や支援をいただける旨の大変心強いお言葉をいただきました。
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ナランバヤル教育大臣,ニャム・オチール教育総局長を囲んで
さらに,モンゴル心理士会バツク会長やモンゴル国立教育大学教育学部心理と方法論学科のガルサンジャムツ学科長との面談の機会をいただき,それぞれとモンゴルと日本における心理士の養成や活動の実情,モンゴル版田中ビネー知能検査の普及などについて意見を交換しました。
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モンゴル心理士会バツク会長と
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モンゴル国立教育大学教育学部心理と方法論学科ガルサンジャムツ学科長と
モンゴル国立教育大学のバトバータル学長にも新学期のお忙しい中,会談のお時間をいただきました。金子教授,野邑特任教授より,ここまでの活動に対する理解と支援へのお礼を述べ,学長からは当センターのモンゴルにおける活動への継続的な支援をお約束いただけました。
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モンゴル国立教育大学バトバータル学長と
在モンゴル日本国大使館も訪問し,当センターの活動についてご説明するとともに,モンゴルの現在の情勢や,モンゴル国内で活動するにあたりとても貴重なご助言を賜りました。
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在モンゴル日本国大使館にて伊藤書記官と
公益社団法人セーブ・ザ・チルドレンのモンゴル駐在員の野元様ともお会いし,今後のモンゴル国内での活動について意見を交換し,今後も情報共有や協力を続けていくことをお約束しました。
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セーブ・ザ・チルドレンの野元様と
3月15-18日 ベトナム訪問
2023-03-20
3月15-18日の予定で、ベトナムのハノイ教育大学を訪問しました。
名古屋大学教育発達科学研究科とハノイ教育大学との間で、学術協定が締結されました。締結の式典には、本学からは、教育発達科学研究科の高井次郎副研究科長、心の発達支援研究実践センター永田雅子センター長等が、ハノイ教育大学からはNguyen Duc Son副学長、Dinh Minh Hang学長秘書室長、Phan Thanh Long特別支援教育学部長、Dinh Nguyen Trang Thu同副学部長等が参加しました。今後、発達障害児支援の共同研究を始めとして、様々な分野での協力が進展することが期待されます。
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今回の訪問は、両大学の共同研究の協議が進められている、新K式発達検査ベトナム版の開発の協議も大きな目的のひとつです。今回、新K式の開発者である、平安女学院大学の清水里美教授、京都国際社会福祉センターの足立絵美研究員に同行いただきました。
清水教授には、「新版K式発達検査」というテーマで、新版K式発達検査の成り立ちから、検査の概要、開発に向けた助言まで、幅広い内容を分かりやすくご講演いただきました。
その後、日本側とベトナム側の研究担当者による、開発に向けた具体的な内容についての協議が行われました。今後、開発に向けてお互いに協力して進めていくことを確認しました。
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2月6-10日 モンゴル国訪問
2023-02-12
2月6-10日の日程で、モンゴル国に訪問しました
今回は、アジア共創教育研究機構融合プロジェクトによる「モンゴル国におけるこどものこころの専門家養成カリキュラムの開発」の一環として、モンゴル国の子どものこころの診療の現状把握と、現地関係者との協議を主たる目的として活動をしました。本学親と子どもの心療科の加藤秀一助教にも同行いただき、子どものこころ専門医の育成を行っている立場から、本プロジェクトへの助言・指導を行っていただきました。
まず、モンゴル国における精神科医育成の責任者であるモンゴル医科大学精神科ヒシゲ教授、オユンスレン講師との面談を行いました。モンゴル国における子どものこころ専門医制度について、モンゴル国の精神科医療の現状を踏まえながら、活発な議論が行われ、大枠について合意が得られました。
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その後、いくつかの関連施設の視察をさせていただきました。
国立精神病院では、児童精神科外来および病棟を見学させていただき、児童精神科責任者のジェルンドルゴル先生から、モンゴルでの現状を伺うことができました。
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日本モンゴル教育病院では、小児科の病棟・外来を見せていただき、小児科の先生からお話を伺いました。日本モンゴル教育病院は2019年に日本の援助でできた総合病院です。国立医科大学の付属病院の位置づけとして、教育や研究の場でもあり、先進的な医療機器も導入されているそうです。精神科は入っておらず、必要がある場合は国立精神病院に依頼をする、とのことでした。
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国立母子保健センター(小児病院)は、小児専門の総合病院で33の診療科があります、
発達の遅れや偏りのある子どもは、小児神経科で診療を受けています。モンゴル各地から患者さんが訪れていて、家族や心理的な問題を抱えているケースも少なくないとのことでした。そうしたケースは、院内にある相談センターに紹介がされていました。
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国立母子保健センター内の相談センターでは、心理職、社会福祉士などにより、院内外の相談を行っています。
院外からは、思春期の問題や虐待などの問題を持つケースが多く相談されています。5名のスタッフで年間3000-4000件の面接を行っているとのことで、大変お忙しい様子でした。ここには心理職が働いていて、心理的なアプローチを担当していましたが、精神科医は病院全体としてもいらっしゃらないとのことでした。
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その後、モンゴル教育大学の先生方とも共同研究についての協議を行いました。
田中ビネー知能検査開発及び検査者養成研修会の開催、発達障害児の現状把握研究に加えて、子どものこころの診療を行う専門家育成プロジェクトも行っていくこととなり、今後もますます活発に活動を行っていきたいと思います。
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12月13-16日 ベトナム訪問
2022-12-18
12月13-16日の日程で、ベトナム(ハノイ)を訪問しました。実質的な活動は2日間でした。
第1日目(14日)は、ハノイ教育大学を訪問しました。
最初に、ハノイ教育大学の先生方とお目にかかって、我々の活動についてご説明をしました。どの先生もよく理解して下さり、今後の共同研究の進展を応援するとのお話をいただきました。また、3月に両者で学術協定を結ぶことを決めて、手続きを進めていくこととしました。
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午後は、ハノイ教育大学特別支援学部の先生方と研究に関する話し合いを行いました。まず、野邑特任教授から、我々が行ってきたモンゴル国での検査開発の話と、新版K式発達検査ベトナム版を開発することに関する検討点について、お話ししました。それを受けて、ベトナム側から質疑がなされ、対象とする年齢や具体的な方法について、検討が行われました。
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11月30日 ギルバーグ教授とのオンラインミーティング
2022-12-01
11月30日に、スウェーデン ヨーテボリ大学のクリストファー・ギルバーグ教授とオンラインミーティングを行いました。ギルバーグ教授は世界的にも高名な児童精神科医であり、我々がモンゴル国立医科大学、モンゴル国立教育大学との三者で行っているモンゴル国における発達障害児の状況把握研究の共同研究者として、ご指導をいただいています。本研究では、ギルバーグ教授がこれまでに使用してきた質問紙調査ツールをモンゴル国で利用することに承諾いただき、ご助言をいただいています。今回のミーティングでは、調査を実施するにあたっての実際上の評価方法や診断検討の手順などについて突っ込んだ議論が行われました。本ミーティングは、高知ギルバーグ発達神経精神医学センターの協力を得て行われました。
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モンゴル訪問報告
2022-11-24
10月26日から31日に、モンゴル国立教育大学教員養成学部およびモンゴル国モンゴル国 国立医科学大学を訪問しました。本センターの永田センター長、野邑特任教授、横山特任助教の他に、本学医学部保健学科作業療法専攻の佐野美沙子助教にも同行いただきました。
今回の訪問期間中、モンゴル国立教育大学教員養成学部の開設100周年記念イベントが開催されました。
モンゴル国 国立医科学大学から「国立医科学大学 80周年名誉勲章」が授与されました。 「国立医科学大学80周年名誉勲章」は、国立医科学大学80周年を記念し、モンゴルに おける教育、科学、医療分野で著しい功績を上げたことを評価し授与される勲章です。
モンゴル訪問報告
2022-06-16
2022年6月6日から10日に、心の発達支援研究実践センター教員3名が、モンゴルを訪問しました。
モンゴル国立教育大学学長O.ALTANGOOと会談。
田中ビネー知能検査モンゴル版検査者養成研修会